実用的!ボールスプライン選定ガイド【選び方・計算・取付け】

設計技術
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ボールスプラインを使った機構を設計しよう!と思ったエンジニアの皆さん。いざやろうと思った時、ボールスプラインの選定方法を忘れてしまったり、思い出すのに苦労したりしていませんか?

そこで、著者のメカエンジニア経験から、よく使う項目を抜粋して、ボールスプラインの選定ガイドとしてまとめました。設計の参考として活用いただければ幸いです。

ご注意

本記載内容は、JISやメーカサイト、経験則からまとめたものであり、
実際の設計現場と一致するものではありませんので、ご自身の判断で活用ください。

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1. ボールスプラインの名称と構造

ボールスプラインを選定する前に、基本知識としてボールスプラインの名称と構造を学習しておきましょう。

ボールスプラインの名称

ボールスプラインは、スプラインナットスプライン軸が組み合わされた機械要素部品のことをいいます。この2つの名称を覚えて起きましょう

ボールスプラインの構造

スプラインナットには、ボールという鋼球が仕込まれており、このボールがスプライン軸の溝に収まり、ボールが転がることで直動動作ができるようになります。この時、ボールには条数というのがあり、ボールと溝が収まる個数を条数といいます。メーカーによってこのボール条数が変わっており、剛性や強度が変わるので注意が必要です。

2. ボールスプラインの選び方

ボールスプラインの名称と構造を理解できたら、ここからボールスプラインの選び方になります。この選び方によって動作に影響するのでしっかりと覚えておきましょう。

選ぶ前の条件出し

選ぶ前にボールスプラインがどういった動作するのかを決めておく必要があります。それによって選定が変わるので条件出しは必要不可欠です。ここで必要不可欠な条件は下記の4つになります。

  • 速度
  • ストローク長
  • 想定負荷(荷重、トルク、負荷方向など)
  • 回転数

スプラインナット

スプラインナットは、強度に関わる重要なファクター部品です。この選定を間違えるとボールスプラインの破損などの故障に繋がります。選定で確認する項目は下記の3つです。

  • ボールの条数(メーカーによる)
  • 定格値荷重(カタログスペックあり)
  • 定格値トルク(カタログスペックあり)

スプライン軸

スプライン軸は、スプラインナットに負荷が加わった時に、どれだけ剛性が保たれるかの実力値が決まる重要な部位です。スプライン軸は太さで強度が変わり、スプラインナットのサイズも変わってきますので注意しましょう。選定で確認する項目は、下記4つです。

  • 太さ(直径)
  • 長さ
  • 曲げ強度(モーメント)
  • ねじれ強度

曲げ強度、ねじれ強度は、各メーカーのカタログに計算方法が記載されているのでそこから計算すると良いでしょう。

材質

ボールスプラインのナット、軸は基本的にスチール(炭素鋼やモリブデンなど)が多いですが、防錆対策でステンレス(SUJ2、SUS440など)のスプラインナット・軸も用意されているメーカーもあります。使いたい構造は、どの材質が適切か選定するようにしましょう。

表面処理

ボールスプラインのナット・軸の表面処理を行うか決める必要があります。特にスチールは錆びやすいので防錆力をつけるための処理が必要です。一般的に以下のような処理方法があります。

  • 硬質クロムメッキ
  • 黒色クロムメッキ
  • レイデント処理
  • 黒染め

3. ボールスプラインの適正計算

選んだナット、軸が条件に合っているかをチェックする必要があります。その確認方法として適正計算があります。各メーカーでも記載しているので、メーカーカタログを参考に算出してみましょう。

危険速度

危険速度とは、ボールスプラインが回転する時の固有振動で動作不良を起こす回転数のことをいいます。これを確認することで、どこまでの回転に耐えられるかを計算で確認することができます。

寿命

ボールスプラインの寿命は、ボールスプラインに仕込まれているボールの動作寿命です。ボールがどこまで耐久力があるかを計算で確認することができます。

4. ボールスプラインの組み付け

スプラインナットとスプライン軸の組み付け状態によって、ボールスプラインの性能に大きく関わってきます。そのポイントは次の3つとなります。

精度

精度とは、スプラインナットとスプライン軸が組み合ったボールスプライン全体の振れ幅のことを指します。ボールスプライン全体の振れが使いたい仕様に合っているかチェックしておくことをオススメします。

予圧

予圧とは、ボール間の隙間状態を指します。予圧には、標準、軽予圧、中予圧の3種類が一般的です。予圧と使用条件は、各メーカーのカタログに記載されているので、参考にしてみましょう。

グリス

ボールを損傷させることなく転がすためにはグリス(潤滑剤)の塗布が必要になります。グリスがないとかじりやすくなり、寿命が極端に短くなります。グリスの種類は豊富にあり、各メーカーも取り揃えがあるので相談して決めましょう。

5. ボールスプラインの取付設計

選定と組み付けができれば、あとはボールスプラインを取り付けるだけです!ただ、取り付けるだけでも設計ポイントがありますので、取付設計のポイントを解説します。

ナットの固定

スプラインナット外径は、概ねはめあい公差の寸法で作られています。それに合わせて取り付け側にもはめあい公差で設計してあげる必要があります。必要なはめあい公差は、各メーカーのカタログに記載してありますので、確認して反映しましょう。

ナットのキー溝

ナットの回転を固定させる構造としてキー溝が採用されていることが多いです。キー溝はJIS規格で定められており、その規格寸法がベースとなっています。詳細は、各メーカーのカタログに記載してありますので、確認して反映しましょう。

軸の固定

スプライン軸を固定させるには、軸端部の設計が必要です。つまり、設計通りに端部を加工してもらう必要があります。固定側の設計ができた段階で、加工は忘れずに!

6. 最後に

ここまで、実用的に使えるボールスプラインの選定ガイドとしてまとめました。
本記事によって機械設計の参考として活用して頂けたら幸いです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。

なお、AKLABO.学習帳では、機械設計のご相談も承っております。
以下のリンクより、お気軽にご相談ください。

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