実務向け!板金設計者が使うバーリング加工基準(板厚・寸法・図面指示)

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設計技術
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設計者なら必ず直面する「薄板へのねじ締結」問題
その定番の解決策が バーリング加工(BRタップ) です
しかし、実際に設計に落とし込もうとすると、こんな疑問が出てきます。

  • どの板厚からバーリングが必要?
  • 材質(SPCC・SUS304・A5052)によって何が違う?
  • 図面にどう書けばいい?高さ寸法は書くべき?
  • カシメナットや溶接ナットとどう使い分ける?

皆さんもこういった経験、心当たりありませんか?
この記事では「これだけ覚えれば即判断できる」というコンセプトで、機械設計エンジニアとして10年以上の経験を踏まえ、バーリング加工の設計基準をまとめました。
さらに、書籍で学びたい方のために、”現場で実際に役立った”書籍もあわせて紹介します。


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はじめに (本記事の目的・使い方)

板金のバーリング加工で設計者が最もつまずくのが
「この板厚でバーリングが必要か」がとっさに判断できない
という問題です。
それが故に、製作不可、品質不良、無駄なコスト増といった問題に繋がってしまうのです。
本記事では、設計判断を即判断できるを目指し、以下を準備しました。

  • バーリング早見表
  • 検図チェックリスト
  • 工法選択の早見表

これをブックマークすることで、実際の実務でその場で設計判断でき、板金設計の検図精度とスピードが大きく向上するはずです。ぜひ活用してみてください。

ご注意

本記載内容は、JISやメーカサイト、経験則からまとめたものであり、
実際の設計現場と一致するものではありませんので、ご自身の判断で活用ください。

1. バーリング加工とは?まず基本から押さえる

バーリング加工とは、板金に開けた下穴の縁をパンチで押し広げ、穴の周囲に円筒状の立ち上がり(フランジ)を成形する塑性加工のことです。「穴フランジ加工」とも呼ばれます。

実務では以下の3工程がセットで「バーリングタップ」として発注されます。

工程内容加工方法
① 下穴加工板金に穴を打ち抜くタレットパンチ(NCT)
② バーリング加工パンチで縁を押し上げてフランジを形成専用バーリングパンチ
③ タップ加工フランジ内径にねじ山を切る切削タップ
実務ポイント

この3工程をまとめて「バーリングタップ(BRタップ)」とも呼びます。
加工メーカーによっては、下穴〜タップ加工まで一括で加工できる設備もあり。

<参考リンク>
バーリング加工とは(Mitsuri Media)
バーリングタップの活用事例(株式会社平出精密)


2. なぜバーリングが必要?「3山ルール」の根拠

ねじの締結では、「ねじは3山以上かかるように設計する」というのが業界の基本ルールです。

なぜ3山かというと、
ねじ山への荷重分担の研究から、有効山数3山以上で締結強度が実用的に安定するためです。

計算で確認してみよう

計算式:有効山数 = 板厚 ÷ ピッチ → 3以上が目安

ねじピッチ3山に必要な板厚t1.0mmでの山数判定
M3(並目)0.5mm1.5mm以上2.0山❌ バーリング必要
M4(並目)0.7mm2.1mm以上1.4山❌ バーリング必要
M5(並目)0.8mm2.4mm以上1.25山❌ バーリング必要

つまり、板厚よりもねじ山のかかり代が不足する場合に、バーリングで「有効板厚」を増やすわけです。

<参考リンク>
バーリング加工におけるタップの選定(Misumi)
板金加工基礎講座・タップ編(AMADA)


3. 材質別のバーリング設計基準【SPCC・SUS304・A5052】

ここが実務で最も詰まるポイントです。
同じM4バーリングでも材質が違えば注意点が変わります。

<参考リンク>
材質別バーリングの注意点(ミスミ meviy)
アルミへの締結方法の比較(Mitsuri Media)

3-1. SPCC(冷間圧延鋼板)

特性評価内容
加工性最も加工しやすい。バーリング加工のスタンダード材
バーリング適性延性が高く、割れにくい。フランジ成形が安定する
使用板厚t1.0〜t3.0まで全域で安定加工可能
注意点表面処理なしでは錆びる。三価クロメートメッキ等を必ず指定すること
実務ポイント

コスト・加工性ともに最優秀。「バーリングしたい → まずSPCCを検討」が実務の基本。
t1.6mm以下はほぼ全てのねじサイズでバーリングが必要になります。

3-2. SUS304(ステンレス鋼板)

特性評価内容
加工性加工硬化が起きやすく、SPCC比でバーリングが難しい
バーリング適性硬度が高くフランジ先端が割れやすい。金型負荷も大きい
使用板厚t1.0〜t2.0が実用域。t2.5以上は要メーカー確認
実務ポイント

バーリング加工後、内径(フランジ径)が縮む傾向があります。
メーカー側はやや大径のチップを使用して補正しますが、フランジ高さの寸法指定は括弧寸法(参考値)にするのが鉄則です。
固定値で指示すると「加工不可」で戻ってくることがあります。

3-3. A5052(アルミニウム合金板)

特性評価内容
加工性柔らかく成形性は良好。割れにくい
バーリング適性フランジ強度が低い。タップのねじ山がつぶれやすい
使用板厚t1.0〜t3.0(軽量化目的で多用される)
実務ポイント

頻繁に付け外しするカバーや点検口などへの適用は避けること。ねじ山がすぐつぶれてバカ穴になります。
代替策としてヘリサート(コイルインサート)またはカレイナット(圧入ナット)を検討をお勧めします


4. 【実務の肝】板厚レンジ別バーリング判断早見表(t1.0〜t3.0)

検図でよく引っかかる「この板厚でバーリングは必要か?」を即答できる早見表です。
これを覚えるだけで検図の精度が大幅に上がります。

板厚M3(P=0.5)M4(P=0.7)M5(P=0.8)M6(P=1.0)備考
t1.0🔴 BR必須🔴 BR必須🔴 BR必須🔴 BR必須全サイズでBR必要
t1.2🔴 BR必須🔴 BR必須🔴 BR必須🔴 BR必須M3は2.4山のみ
t1.5🟡 BR推奨🔴 BR必須🔴 BR必須🔴 BR必須M3は3山ちょうど。実務上BR推奨
t1.6🟢 直タップ可🔴 BR必須🔴 BR必須🔴 BR必須M3直タップ可(3.2山)
t2.0🟢 直タップ可🟡 BR推奨🔴 BR必須🔴 BR必須M4は2.86山 → BR推奨
t2.3🟢 直タップ可🟢 直タップ可🟢 直タップ可🟡 BR推奨M6は2.3山 → BR推奨
t3.0🟢 直タップ可🟢 直タップ可🟢 直タップ可🟢 直タップ可全サイズで直タップ可

🔴=BR必須 🟡=BR推奨(直タップはリスクあり) 🟢=直タップ可 | 有効山数 = 板厚 ÷ ピッチ

実務ポイント

t1.5mmのM3タップは「理論上ちょうど3山」ですが、板厚公差でアンダーになることがあります。
設計意図よりも加工余裕を優先するのが実務の鉄則です。

<参考リンク>
バーリングができる板厚とタップサイズ(製缶板金加工.com)


5. バーリングタップ(BRタップ)寸法早見表

設計現場で使う寸法をまとめました。
メーカーによって多少の差がありますが、初期設計の目安として活用してください。

<参考リンク>
板金加工の基礎講座第12回 タップ加工(AMADA)
下穴って?ネジ穴を開ける手順を解説(TOOL Remake)

M3バーリングタップ(並目 P=0.5)

板厚材質下穴径 dフランジ内径 φA高さ H(板厚含む)備考
t1.0SPCCφ1.7φ2.57約2.0mm切削タップ用
t1.2SPCCφ1.7φ2.57約2.2mm切削タップ用
t1.0SUS304φ1.75φ2.57約2.0mm加工後縮みに注意
t1.0A5052φ1.7φ2.75約2.0mm転造タップ推奨

※上表は参考値です。実際の数値は発注先板金メーカーの標準値を必ず確認してください。高さHは板厚を含む値です。

M4バーリングタップ(並目 P=0.7)

板厚材質下穴径 dフランジ内径 φA高さ H(板厚含む)備考
t1.0SPCCφ2.2φ3.4約2.5mm切削タップ用
t1.2SPCCφ2.2φ3.4約2.6mm切削タップ用
t1.6SPCCφ2.5φ3.4約3.0mm最も安定した加工域
t1.0SUS304φ2.3φ3.4約2.5mm加工後縮みに注意
t1.6A5052φ2.2φ3.65約3.0mm転造タップ推奨

※上表は参考値です。実際の数値は発注先板金メーカーの標準値を必ず確認してください。高さHは板厚を含む値です。

M5バーリングタップ(並目 P=0.8)

板厚材質下穴径 dフランジ内径 φA高さ H(板厚含む)備考
t1.6SPCCφ3.1φ4.3約3.5mm切削タップ用
t2.0SPCCφ3.5φ4.3約3.8mm最も安定した加工域
t1.6SUS304φ3.2φ4.3約3.5mm加工後縮みに注意
t2.0A5052φ3.1φ4.6約3.8mm転造タップ推奨

※上表は参考値です。実際の数値は発注先板金メーカーの標準値を必ず確認してください。高さHは板厚を含む値です。


6. 図面指示の書き方と検図チェックポイント

板金メーカーに伝わる図面指示の書き方は以下が基本です。
また実際に引っかかりやすいポイントを7項目もまとめました。

実務ポイント

実務での推奨:2D図面に指示を明記し、3DデータはSTEP形式で納品する「3点セット(3D STEP + 2D DXF + 2D PDF)」が板金メーカーにとって最もわかりやすい。
3DモデルへのBR形状の反映は省略可。

6-1. 図面への記載方法(これで伝わる!)

指示例解説
M4 BR タップ(表側突き出し)最もシンプルな指示。タップまで含む場合に有効
M4バーリング、タップ加工、並目(裏側突き出し)タッピングビスとの混同を防げる。明確な指示
3×M4BRタップ(表側)同一仕様が3箇所の場合。引出線を1本に集約できる
M4バーリング H=3.0(参考)⚠ 高さ指定は括弧(参考値)とすること。固定値はNG

6-2. 【検図で詰まらない!】設計者必携チェックリスト

Noチェック内容判断基準NG時の対策
1板厚とねじサイズで3山確保できているか板厚 ÷ ピッチ ≥ 3BRタップに変更
2BRの突き出し方向が相手部品と干渉しないか突き出し方向の指定が図面にあるか方向変更 or 相手側クリア確認
3バーリング穴から折り曲げ線・他穴までの距離フランジ高さ+板厚以上の余裕があるか配置変更 or 曲げ順変更
4SUS304・A5052の加工可否をメーカー確認したかM3〜M5・板厚条件が適合しているか事前にメーカーへ問合せ
5A5052に頻繁に脱着する設計になっていないか脱着頻度の確認カレイナット・ヘリサートに変更
6バーリング高さ(H)を固定寸法で指示していないか括弧寸法 or 記載省略参考値( )に変更
7バーリング近傍に他穴・スリット等の開口部がないか中心間距離 ≥ (φA + 穴径) × 1.5穴位置を離す or 形状変更

7. バーリング vs カシメナット vs 溶接ナット ─ 工法選択の判断基準

「バーリングにするか、カレイナット(圧入)にするか、溶接ナットにするか」
これはコスト・品質・メンテナンス性に直結する重要な判断です。
他の記事ではあまり触れられていないこの3択比較を、実務目線でまとめます。

比較項目バーリングタップカレイナット(圧入)溶接ナット
コスト◎ 最安(部品追加なし)△ ナット代が発生△ 溶接工賃が発生
脱着耐久性△ 繰返しでねじ山摩耗○ ナット自体が高耐久◎ 最も強固
アルミ適性△ 山つぶれリスク◎ アルミとの相性◎△ 溶接性に難
寸法精度○ プレス精度範囲内○ 圧入精度で安定△ 溶接歪みリスク
リードタイム◎ プレスで一工程完了○ 比較的短い△ 溶接工程が追加
推奨用途薄板・量産・コスト優先アルミ・頻脱着・強度必要重荷重・恒久固定
実務ポイント

選択フロー(実務の判断基準)
STEP1: 板厚とねじサイズで3山確保できる? → YES → 直タップでOK
STEP2: できない → 材質はアルミ(A5052)か? → YES → カレイナット検討
STEP3: アルミ以外 → 頻繁に脱着する箇所か? → YES → カレイナット or 溶接ナット
STEP4: 脱着少ない→バーリングタップ(コスト最優先)


8. 設計でやってしまいがち!バーリングNGパターン集

現役エンジニアとして実際に経験した・検図で発見したNG例です。発注前に必ず確認しましょう。

NGパターンなぜNGか・対策
バーリング高さを固定値で指定加工メーカーが下穴径・板厚条件で高さが決まるため、固定値を入れると「加工不可」で返ってくる。→ 括弧寸法(参考)とするか高さ記載省略。
A5052のt1.0にM3BRタップ指示アルミは強度が低く、M3はフランジが非常に薄くなり割れリスクあり。M3はアルミのBRには適さない。→ カレイナット採用を検討。
バーリング突き出し方向の指示なし方向が不明だとメーカーが加工できず問合せが発生。特に組立方向に突き出ると相手部品と干渉する。→ 必ず「表側」または「裏側」を明記。
SUS304でバーリング後にバリ取り寸法を厳しく指定SUSはバーリング先端が若干粗くなる。バリ取り必須の場合はコスト上昇要因。→ エッジ要求が厳しい場合は工法変更(カシメ等)を検討。
曲げ線からバーリングが近すぎる曲げ加工でバーリング部が引っ張られ変形する。曲げ最小距離≥ (フランジ高さ + 板厚 × 2) を守ること。

9. 板金設計力をさらに上げる!現役エンジニアが選ぶ参考書籍

板金設計の知識を体系的に身につけるには書籍が近道です。現場で実際に役立った書籍をご紹介します。

書籍1 板金加工の基礎知識(日刊工業新聞社)

板金の曲げ·バーリング·タップ等の基本加工をイラスト豊富に解説。設計部門への入門書として最適。図面指示の書き方も解説されており、本記事の内容をさらに深く学ぶことができます。

書籍2 機械設計製図便覧(理工学社)

JIS準拠の図面表記·はめあい·ねじ規格が一冊にまとまった設計者必携の辞典。板金の図面指示を調べるときに手元に置いておきたい一冊です。

最後に

板金バーリング加工の設計基準を、材質·板厚·図面指示·工法選択まで徹底解説しました。
本記事によって機械設計の参考として活用して頂けたら幸いです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。

なお、AKLABO.学習帳では、機械設計のご相談も承っております。
以下のリンクより、お気軽にご相談ください。

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