何ができる?クロスローラーベアリングの使い方【設計15年の視点】

スポンサーリンク
サイバーリンク公式オンラインストア
設計技術
本サイトはプロモーションが含まれることがあります
スポンサーリンク

クロスローラーベアリングについて調べてみると、必要な情報が分散していて、調べるだけでも大変ですよね。

選定の基準
正確な組立方法
設計時の計算式

など・・・

結局どこから手をつければいいのか分からない・・・、そんな経験はありませんか?

本記事では、設計経験15年の視点を活かし、バラバラに散らばった情報をクロスローラーベアリングの設計ガイドとしてまとめました。設計の参考として活用いただければ幸いです。

ご注意

本記載内容は、JISやメーカサイト、経験則からまとめたものであり、
実際の設計現場と一致するものではありませんので、ご自身の判断で活用ください。

スポンサーリンク

1. クロスローラーベアリングの特長

クロスローラーベアリングは、多方向荷重への対応、高剛性・高精度、コンパクトな設計、スムーズな回転性など優れた特性を持っています。

設計経験15年の視点でも、クロスローラーベアリングはロボットアームや精密工作機械など、精度と耐久性が要求される設計に最適な機械要素部品です。

では、クロスローラーベアリングの特長をどのように設計の可能性を広げるのかをご紹介します。

多方向荷重対応

クロスローラーベアリングは、互いに直交する形で配置されたローラーを活用することで、軸方向、半径方向、モーメント方向の荷重を同時に支えることが出来ます。さらに、ローラー間に配置されたスペーサーにより摩擦を最小限に抑え、滑らかな回転を実現できるものとなっています。

ポイント

多方向荷重を一つの軸受で対応できるので、設計の省スペース化が可能

高い剛性と精密性

接触面積を最大化する構造設計により、荷重を効率的に分散させ、高い剛性を確保することができ、適切な予圧設定を行うことで、安定した精密回転が得ることが出来ます。よって、従来の二列アンギュラボールベアリングに比べ、剛性が大幅に向上するのがクロスローラーベアリングの良いところです。

ポイント

従来のアンギュラボールベアリングより大幅な剛性が見込める

コンパクト設計

コンパクト化に重点を置き、外径と内径のサイズを抑えながらも高い性能を維持しています。特に超薄型モデルでは、厚み5.5mm、幅5mmの超小型をリリースしたメーカーもあります。よって小型化が求められる機械や狭い空間に設置される装置に最適でしょう。

ポイント

軽量化や省スペース化を求められる設計に最適

スムーズな回転性能

スペーサーの使用により、ローラー間の摩擦が軽減され、ローラーの傾きやロックの発生を抑制することで、信頼性の高い動作を保証されています。なので、クロスローラーベアリングにとってスペーサーは重要な部品であることを理解しておきましょう。

ポイント

スペーサーがあることで、ローラーのスキュー(倒れ)やロック現象を回避している

簡易な取り扱いと組立

分割構造が施された外輪または内輪は、あらかじめ固定されているため、設置や調整がスムーズに行えます。これにより、作業効率の向上と時間の短縮が期待できます。

分割された外輪または内輪が固定されており、組付けが容易。初期設定や調整の時間を短縮。

ポイント

分割された外輪または内輪が固定されているので、組立が容易

2. クロスローラーベアリングの種類と用途

クロスローラーベアリングは、その用途や設計要件に応じて多彩な種類が存在しています。それぞれのタイプは、特定の機能や性能に特化しており、適切に選ぶことで性能を最大限に引き出すことが出来ます。ここでは、代表的なクロスローラーベアリングの種類と、その用途について詳しく解説します。

外輪分割型

内輪一体構造で外輪が分割されており、内輪回転に適しています。適用例としては、インデックステーブル旋回部や精密機器などがあります。

内輪分割型

外輪一体構造で内輪が分割され、外輪回転に適しています。外輪の高精度な回転が必要な用途に最適です。

高剛性型

内外輪一体構造で、高剛性と高精度が求められる場合に使用することが多いです。また、内外輪同時回転が可能です。

フランジ穴付きタイプ

取り付けが簡単なフランジ穴付きのベアリングです。機器への固定が容易で、組立コストを削減することが出来ます。

超薄形タイプ

極めて薄型で軽量なクロスローラーベアリングで、断面高さが従来比69%まで低減され、質量も38%削減された超薄型タイプです。適用用途として、小型軽量化が求められるロボットや精密装置などに使われます。

3. 選定ポイントとなる条件(計算、潤滑、予圧)

クロスローラーベアリングの性能を最大限に引き出すためには、定格寿命や静的安全係数の正確な計算適切な組付け、そして最適な潤滑が欠かせません。さらに、予圧の調整を通じて高精度な回転運動を実現することも重要です。これらの要素について詳しく解説します。

基本定格寿命の計算

定格寿命 は以下の式で計算されます

  • C: 基本動定格荷重 (N)
  • Pc: 動等価ラジアル荷重 (N)
  • fT: 温度係数
  • fW: 荷重係数

静的安全係数

静的安全係数 fs は次のように求められます

  • C0: 基本静定格荷重 (N)
  • P0: 静等価ラジアル荷重 (N)

組み付けと潤滑

・適切な組付け方法が重要
組付け時には衝撃を与えないことが重要です。また、フランジ穴付きタイプなど、取り付けが容易な構造を持つベアリングは、組立工数を削減し作業効率を向上させます。

・適切な潤滑が重要
ベアリングの性能を最大限に引き出すには適切な潤滑が必要です。グリースや液晶潤滑剤を使用することで、寿命を延ばし摩耗を防ぐことができます。

予圧の調整

分割構造の内輪や外輪では、予圧の調整が可能です。
これにより、高精度な回転と長寿命を両立することができます。

4. 設計経験15年で得たノウハウまとめ

最後に、設計経験を基にした以下の実践的なヒントを紹介します。

設計段階での計算が製品寿命を左右する

設計時に行う計算は、製品寿命を予測するための重要なステップです。
寿命を求める公式は以下の通りです

La^10​=(C/Po​)^3×10^6

La:基本定格荷重
Po:作用荷重

【計算例】
例えば、基本定格荷重が5000N、作用荷重が2500Nの場合

La^10​=(5000/2500​)^3×10^6=8百万回転

荷重条件の確認

ラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメント荷重の3方向荷重を適切に計算することが重要です。具体的な使用条件に基づき、必要な定格荷重を満たす製品を選択しましょう。

寸法と取り付けスペース

クロスローラーベアリングを使うことで、限りあるスペース内で回転構造を成立できます。設置スペースに応じた内径、外径、厚みを持つベアリングを選びましょう。特に小型化が求められる場合は、超薄形タイプが適しています。

回転精度と剛性

高精度な回転を求める場合、予圧調整可能な製品やUSP級精度を持つベアリングを検討しましょう。

使用環境

環境温度、外力負荷を考慮した選定が必要になります。
通常の使用温度の温度系数の目安は、80℃以下。それ以上の高温環境下では、温度係数を考慮したベアリングを選びましょう。
外力には、静的安全係数の目安として、普通荷重:1〜2、衝撃荷重:2〜3を最低ラインとしましょう。

潤滑方法

通常のベアリングと同様に、クロスローラーにもフレッチングがあります。
フレッチングは、転動体(ボールやコロ)が一回転しない使い方をすると潤滑ができなくなり、著しい摩耗などが起きるため、必ず転動体が1回転する動作になるようにしましょう。
どうしても1回転未満の動作が必要の場合は、耐フレッチンググリスもあるのでメーカーに相談しましょう。


5. 最後に

ここまで、クロスローラーの使い方設計ガイドとしてまとめました。
本記事によって機械設計の参考として活用して頂けたら幸いです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。

なお、AKLABO.学習帳では、機械設計のご相談も承っております。
以下のリンクより、お気軽にご相談ください。

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました