機械設計の中で直動移動に変換してくれる便利なボールねじ。そんな便利なボールねじの選定に悩まされていませんか?本記事では、選定や計算などの項目を実務ポイント付きで解説をまとめた完全ガイドです。
本記事の引用元はメーカー技術資料を中心にリンク付きで解説しています。
引用元は下記の「参考リンク(出典)」を参照ください。設計の参考として活用いただければ幸いです。
参考リンク(出典)
- THK|ボールねじ 製品情報・推力/トルク・特長
- THK|選定のポイント(フロー・精度・寿命・剛性・安全設計)
- THK|軸方向荷重の算出・静的安全係数
- MISUMI 技術情報|ボールねじの選定方法(JIS精度 ep, V300, V2π)
- NSK|直動製品 選定ツール
- NSK|Click!Speedy 設計ツール
- 黒田精工|ボールねじ選定ソフト/ボールねじ 製品情報
- 黒田精工 Q&A|ボールねじの種類(転造と研削)
- ものづくりのススメ|ボールねじ 計算ツール
- 技術計算製作所|ねじ設計計算(一般ねじ寸法)
- レビュー記事|サラメカ:ねじ設計のおすすめ参考本/ものづくりのススメ:ねじ関連のおすすめ本
- 書籍(専門)|井沢 実『ボールねじ応用技術』
本記載内容は、JISやメーカサイト、経験則からまとめたものであり、
実際の設計現場と一致するものではありませんので、ご自身の判断で活用ください。
1. はじめに:なぜボールねじを学ぶべきか?
ボールねじは、回転運動を高効率に直線運動へ変換できる送り機構です。すべりねじに比べ駆動トルクが約1/3とされ、精密な位置決めと省エネを両立できるため、工作機械、産業ロボット、搬送装置などで広く使われています。
精度・剛性・寿命・トルクのバランスを適切に設計するには、選定手順と必要計算を体系的に押さえることが近道です。
⭐️実務ポイント⭐️
入門資料として THK 製品情報 がわかりやすく詳しく記載されています。
手順や規格値は THK:選定のポイント と、MISUMI 技術情報 が実務でよく参照されます。
2. ボールねじの基本構造と種類
ボールねじは、低摩擦・高効率で直線運動を得るための精密機械要素です。鋼球が転がることで摩擦を大幅に低減し、微小送りや高精度位置決めを可能にします。
⭐️実務ポイント⭐️
構造と特長は THK 製品情報 が詳しく記載があります
構造
主要部品は以下です。製品ごとの循環方式や派生構造(ボールリテーナ入り、スプライン一体型など)は、特性・メンテ性・騒音にも影響します
種類
ボールねじの種類は以下です。製造方法と特徴の区別は各メーカーQ&Aでも明示されています。
(例:黒田精工Q&A)。
3. ボールねじの選定手順
選定は、使用条件の定義 → 精度 → リード・軸径 → 取付条件 → 許容値(荷重・回転数)→ 寿命・剛性 → トルク → 安全設計の順で反復しながら詰めます。
⭐️実務ポイント⭐️
THK の選定フローが網羅的で、MISUMI の精度規格表が参照に便利です。
- 使用条件の設定:
ストローク、取付姿勢、テーブル質量、最高速度・加減速、必要位置決め精度、環境(粉塵・温度)を数値で固定(THK 選定)。 - 精度等級の選定(C3/C5/C7…)
要求精度 ≧ 代表移動量誤差の許容値となるよう、JIS特性(ep, V300, V2π)で整合(MISUMI 技術情報)。 - 軸長の仮定/リード・軸径の仮決定
大リードは高速向きだが必要トルク増。後段のトルク計算で整合確認(THK)。 - 取付方法(端末支持条件)
固定‐固定/固定‐支持/支持‐支持/固定‐自由は危険速度・座屈に影響(回転数の許容計算で端末係数を使用。例:Web計算ツール)。 - 許容軸方向荷重・許容回転数の確認
静定格荷重→静的安全係数、危険速度・DN値を確認し、仮決定寸法を反復調整(THK:静的安全係数)。 - 寿命・剛性・位置決め精度
動定格荷重から回転寿命・距離寿命・時間寿命を算出。予圧の有無を含め剛性・バックラッシュも照査(THK 選定)。 - 回転トルク → モータ選定
予圧・外力・摩擦・慣性(イナーシャ)込みの加速/等速/減速トルクと定格・瞬時最大の余裕度評価(例:Web計算ツール)。 - 安全設計(潤滑/防塵/オプション)
潤滑ユニット、シール、防塵カバー等を確定(THK 選定)。
4. 必要な計算の種類
計算は選定理由の根拠であり、レビューの信頼性にも直結します。最低限の計算は以下。
⭐️実務ポイント⭐️
選定開始時は、メーカーの選定/設計ツールで探索 → 重要設計ではカタログ式や社内標準式で再計算して裏取りするのが安全。
5. 無料で使える計算ソフト・アプリ
メーカー公式と信頼できるWeb計算を併用し、仮選定の絞り込み → 詳細詰めのループを高速化します。
⭐️実務ポイント⭐️
使い方のコツは、ツールで得た結果は型式の絞り込みに活かし、最終はメーカーのカタログ数値・注意事項で整合性を必ずチェックすることです。
6. 参考になる本
ネット情報だけだと安全率や係数の根拠が散逸しがちです。設計者は書籍で基礎理論と実務係数を押さえると意思決定が安定します。
⭐️実務ポイント (選び方の目安)⭐️
入門1冊+中級or専門1冊の二冊構成にすると、原理→係数→設計判断まで一気通貫で強化できます。
初心者向け 『図解!わかりやすーい機械技術者のための材料選定実務入門』
初学者でも読みやすい構成で、設計の考え方を体系的に学びたい人におすすめです
中級者向け 『増補 ねじ締結概論』
計算例・演習が豊富で定量設計の勘所が身につきます。
上級者向け 『トラブルを未然に防ぐ ねじ設計法と保全対策』
事例起点で設計・保全を俯瞰。締め付け管理や未然防止に強い本になっています。
専門特化 『ボールねじ応用技術』
構造・性能・製造・応用例まで網羅する希少な専門書になっています。
7. 国内主要メーカーと特徴
どのメーカーも品質は高水準ですが、強みの違いを把握すると選定が迅速です。
⭐️実務ポイント⭐️
機械設計15年以上の経験から、以下のような印象が強いです。
・THKは高度な技術と情報広さがよく、先生的なポジション
・NSKは特殊選定に特化
・黒田精工はカスタマイズ性に特化
8. 最後に
ここまで、ボールねじ完全ガイドとしてまとめました。
本記事によって機械設計の参考として活用して頂けたら幸いです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
なお、AKLABO.学習帳では、機械設計のご相談も承っております。
以下のリンクより、お気軽にご相談ください。

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