実務向け!機械設計で使えるグリースの種類と選定方法【部品別の選定ポイントあり】

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設計技術
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こんな悩みを抱えている設計者の方、いませんか?

  • ベアリングに何のグリースを入れればいいかわからない…
  • リニアガイドとボールねじで同じグリースを使っていいの?
  • グリースを変えたら機械が壊れた、なんてことにならないか不安…

かつての私もまったく同じでした。
設計歴15年以上の私でも、入社してしばらくは「グリースはとりあえずリチウムグリースでいいや」と深く考えずに選んでいました。
そのせいで高温環境のベアリングが早期焼き付きを起こし、先輩にひどく怒られた苦い経験があります。

この記事では、そんな失敗から学んだ「これだけ覚えれば実務で使える」グリース知識を、
ベアリング・リニアガイド・ボールねじの機械要素部品ごとに、わかりやすく解説します。
設計初心者でも理解できる5ステップ選定フローつきですので、ぜひ最後まで読んでみてください!

ご注意

本記載内容は、JISやメーカサイト、経験則からまとめたものであり、
実際の設計現場と一致するものではありませんので、ご自身の判断で活用ください。

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グリースとは?まず3つの成分だけ覚えよう

グリースを難しく考える必要はありません。
構成要素はたったの3つです。これだけ覚えれば、あとの話がすべて理解できます。

成分割合の目安役割(ひとことで)
基油(きゆ)70〜95%実際に潤滑する主役。鉱油 or 合成油。
増ちょう剤
(ぞうちょうざい)
5〜20%基油を半固体に閉じ込めるスポンジ役。種類でグリースの性格が決まる。
添加剤数%さびどめ・酸化防止・極圧対応など特定性能を強化する補助役。

🔑 設計者が最も気にすべきは「増ちょう剤の種類」
基油の粘度と増ちょう剤の組み合わせが、耐熱性・耐水性・耐荷重性を決めます。
「グリースを選ぶ=増ちょう剤を選ぶ」と覚えておきましょう。

📚 参考:ベアリングコラム 初心者講座5「ベアリング用グリース」|JTEKT Koyo

増ちょう剤の種類と特性|これが選定の核心

増ちょう剤には主に5種類あります。
下の表を「グリース選定の辞書」として使ってください。

種類耐熱性耐水性耐荷重コスト主な用途
リチウム石けん△ 〜130℃低い一般産業・汎用ベアリング全般
ウレア(尿素)◎ 〜180℃中程度モータ・工作機械・食品機械周辺
リチウムコンプレックス〇 〜180℃中程度重荷重・高速ベアリング
フッ素(PTFE)◎ 〜260℃非常に高い真空・半導体・化学耐性必要な環境
カルシウム石けん× 〜80℃低い屋外・低温・防水が最優先の箇所

◎優れる 〇良好 △やや劣る ×不向き(使用温度はあくまで目安)

💡 現場ワンポイント
「とりあえずリチウム」は間違いではありませんが、130℃以上になる箇所では必ずウレアかリチウムコンプレックスを選ぶことが望ましいです。これだけで早期焼き付きの大半は防げます。

📚 参考:潤滑剤(ミニチュア・小径ボールベアリング)|ミネベアミツミ
📚 参考:潤滑剤|ベアリングの基礎知識|JTEKT Koyo

設計初心者でも使える!5ステップ グリース選定フロー

「グリース選定って難しそう…」と感じる方のために、私が15年の実務経験から凝縮した5ステップ選定フローを作りました。
難しい式や計算は一切不要。順番に答えるだけでグリースが決まります。

STEP 1:何度の環境で使うか?(温度チェック)

まず最初に確認することは、ただひとつ。「最高何℃になる場所か」です。
ここを間違えると、どんなに良いグリースを選んでも意味がありません。

使用温度選ぶ増ちょう剤
〜80℃リチウム石けん(カルシウムも可)
80〜130℃リチウム石けん or リチウムコンプレックス
130〜180℃ウレア or リチウムコンプレックス(必須)
180℃超フッ素系(PTFEグリース)

STEP 2:水・薬品・粉塵にさらされるか?(環境チェック)

次に、グリースの周囲環境を確認します。

  • 💧 水・蒸気にさらされる → 耐水性の高いウレアかリチウムコンプレックスを選ぶ
  • 🧪 溶剤・薬品にさらされる → フッ素系(化学安定性◎)を選ぶ
  • 🌫️ 粉塵が多い → シール付き部品+高粘度グリースで保護する
  • 🍎 食品機械NSF H1規格認証グリースを必ず使用する

⚠️ 食品機械の設計者は必読
食品機械では、NSF H1(食品に付着する可能性があっても安全な潤滑剤)認証品以外のグリースを使ってはいけません。通常のグリースを使ってしまい後から発覚すると、製品リコールに発展するケースもあります。
参考:NSF H1グリースについて|JAX JAPAN

STEP 3:速い?遅い?(回転数チェック)

グリースには「速い動きに向いているもの」と「遅くて重い動きに向いているもの」があります。
判断基準はとてもシンプルです。

  • 🚀 高速回転(dmn値が高い)低ちょう度(やわらかいグリース)・低粘度基油を選ぶ
  • 🐢 低速・重荷重高ちょう度(かためのグリース)・高粘度基油+極圧添加剤入りを選ぶ

🔑 「ちょう度番号」とは?
グリースのやわらかさを示す数値。数字が大きいほどかたい(0号〜3号が一般的)。
ベアリング・リニアガイドはNLGI 2号が汎用的な標準です。
📚 参考:グリース潤滑|NSK

STEP 4:どの機械要素部品か?(部品チェック)

ベアリング・リニアガイド・ボールねじでは、最適なグリースが微妙に異なります。
次章で部品ごとに詳しく解説しますので、まずは「部品によって違う」と覚えておきましょう。

STEP 5:メーカー推奨グリースを最終確認

STEP 1〜4で絞り込んだら、最後にメーカーの技術資料・カタログで推奨品を確認します。
NSK・THK・IKO・ミスミ等の主要メーカーは、部品ごとに推奨グリースを明記しています。
これを最終確認することで選定ミスをほぼゼロにできます。

✅ 5ステップのまとめ

  1. 温度 → 増ちょう剤の種類を絞る
  2. 環境(水・薬品・食品)→ 特殊対応が必要か判断
  3. 速度・荷重 → ちょう度・基油粘度を決める
  4. 部品の種類 → ベアリング/リニアガイド/ボールねじで最適化
  5. メーカー推奨を最終確認 → 選定完了!

部品別グリース選定ガイド|ベアリング・リニアガイド・ボールねじ

① ベアリング(軸受)のグリース選定

ベアリングはグリース潤滑が最も多く使われます。
転がり軸受全体の約80%がグリース潤滑です(NSK資料より)。

ベアリングのグリース選定ポイント

  • 汎用の常温環境:リチウム石けん系グリース(NLGI 2号)が最適。安価で入手しやすい。
  • モータ・高温環境:ウレアグリースに変更。130〜180℃まで対応。
  • 高荷重・衝撃荷重:極圧添加剤入りリチウムコンプレックスグリース。
  • 半導体・真空環境:フッ素グリース(蒸気圧が低く揮発しない)。

補充量の目安(重要!)

グリースを入れすぎると発熱・焼き付きの原因になります。
一般的な目安は以下の通りです。

回転数ハウジング空間容積
に対する充填量
許容回転数の50%以下1/2〜2/3
許容回転数の50%以上1/3〜1/2

出典:NSK グリース潤滑

⚠️ 銘柄の違うグリースを混ぜてはいけない!
「前のグリースが残っているから上から足す」は厳禁です。
増ちょう剤の種類が異なるグリースを混合すると、グリースが軟化・分離して潤滑不良を引き起こします。
補充前は古いグリースを可能な限り除去してください。
📚 参考:潤滑剤|JTEKT Koyo

② リニアガイドのグリース選定と給油

リニアガイドは直線運動の精度を維持するための部品です。
グリースが不足すると摩擦増大→精度悪化→転動体の損傷という悪循環が起きます。

リニアガイドに向くグリース

  • 一般産業用途:リチウム系またはウレア系 NLGI 2号が標準
  • 高速送り(工作機械など):低粘度基油のウレアグリース推奨
  • クリーンルーム・半導体製造装置:フッ素系または低飛散グリース

給油間隔の目安(ここを知っている設計者は少ない!)

多くの設計者が見落とすのが、リニアガイドの「給油間隔の設計」です。
メーカー推奨(MISUMIリニアガイドの例)では以下が基準となっています。

条件推奨給油間隔
通常使用6ヶ月ごと
走行距離が長い場合3ヶ月ごと、または1,000km超えたら都度
粉塵・汚れの多い環境上記より短い間隔で随時点検

出典:使用方法/メンテナンス(グリース給油)|MISUMI リニアガイド

🔑 設計段階でグリースニップルの位置を決める!
後からグリースを補充できないレイアウトにしてしまうのは設計ミスです。
ブロックのグリースニップル(給油口)がメンテナンス時にアクセスしやすい向き・位置になるよう、配置段階から意識してください。

③ ボールねじのグリース選定

ボールねじはベアリング的な回転運動と、ねじの直線送り運動を同時に行う複合的な部品です。
そのため、グリースには「転がり摩擦への対応」と「滑り摩擦への対応」の両方が求められます。

ボールねじ向けグリース選定のポイント

  • 汎用用途:リチウム系またはウレア系 NLGI 2号
  • 高速送り:低粘度基油のグリース(トルク増加を抑える)
  • ショートストローク繰り返し:グリースが偏って枯渇しやすい。定期的に長ストローク動作(ボールねじ全長の1往復)を加えることで偏りを防止できる。
  • 精密位置決め用:バックラッシの影響を最小化するため、低粘度・低抵抗グリース。

💡 ショートストロークは要注意!
ボールねじを短いストロークで繰り返し使うと、グリースが一箇所に溜まり、ナット内のボール循環部が油切れになります。
NSKの資料では「数千サイクルに1回、ねじ巻き数の2倍以上の長ストロークを加えること」を推奨しています。
📚 参考:NSK 直動製品 使用条件の注意点

絶対やってはいけない!グリース3大NGとその対処法

ここからは、現場で実際に起きたトラブルをもとにした「やってはいけない3つのNG」です。
知っているだけで機械の寿命が大きく変わります。

NG①:増ちょう剤の違うグリースを混ぜる

前述の通り、異種グリースを混合すると潤滑性能が急激に低下します。
グリース交換時は必ず古いグリースを除去し、同一増ちょう剤系のグリースを使用してください。

NG②:充填量を多くしすぎる

「多い方が安心」は大間違いです。
過充填すると攪拌抵抗が増して発熱が起き、グリースが急速に劣化して焼き付きに至ります。
充填量は必ずメーカー推奨の1/3〜2/3の範囲内を守りましょう。

NG③:ゴミ・水分が混入した状態で補充する

メンテナンス時にグリースニップルや給油口に異物が付着したまま補充すると、
異物ごと軸受内部に押し込んでしまいます。
補充前は給油口の清掃を徹底し、清潔な環境でグリース補充を行いましょう。

主要3メーカーのグリース一覧|THK・IKO(日本トムソン)・NSK(日本精工)

第3章のSTEP 5で「最後にメーカー推奨グリースを確認する」とお伝えしました。
ここでは、機械設計の現場で最もよく使われる3社のオリジナルグリース一覧を整理しました。
製品購入先が決まったら、下の表と照らし合わせて推奨品を選んでみましょう。

🔑 使い方のポイント
「増ちょう剤の種類」欄を5ステップ選定フローの結果と照らし合わせると、候補が絞りやすくなります。
不明点はメーカーのカタログ・技術資料か、担当営業に問い合わすることをおすすめします。

① THK オリジナルグリース一覧

THKは主にLMガイド(リニアガイド)・ボールねじ向けのオリジナルグリースを10種類ラインナップしています。
用途ごとに細かく種類が分かれているのが特徴で、クリーン環境・高負荷・医療食品など専用品が揃っています。

グリース名増ちょう剤主な特長・用途
AFAグリースウレア系微振動・耐水性・低摺動。汎用ウレア系の標準グリース。
AFB-LFグリースリチウム系万能タイプ・高負荷・耐水性。機械安定性に優れた汎用リチウム系。
AFCグリースウレア系耐フレッチングコロージョン用・微振動環境向け。
AFE-CAグリースウレア系低発塵・クリーン環境用。半導体・液晶製造装置向け。
AFFグリースリチウム系低発塵・クリーン環境用(リチウム系)。微振動対応。
AFGグリースウレア系ボールねじ発熱対策用・低摺動。高速ボールねじへの給脂に特に有効。
AFJグリースウレア系広速度範囲用・高負荷・微振動。低速から高速まで対応する万能ウレア系。
L100グリースリチウムコンプレックス系クリーン環境用・高荷重対応。低発塵かつ高負荷が要求される用途向け。
L500グリースリチウムコンプレックス系高負荷ボールねじ専用。重荷重・繰り返し荷重が大きいボールねじに最適。
L700グリースカルシウムスルフォネートコンプレックス系医療・医薬食品機械専用。高負荷・耐水性に優れ、食品機械・医療機器の安全基準に対応。

📚 出典:THKオリジナルグリース|THK公式サイト

② IKO(日本トムソン)推奨グリース一覧

IKOはリニアウェイ(リニアガイド)・ニードルベアリング向けに、主に3種類の指定グリースをラインナップしています。
特にクリーン環境・耐フレッチング性能に特化した品揃えが特徴です。
真空・高温環境向けの特殊グリースは都度問い合わせ対応となっています。

グリース名増ちょう剤主な特長・用途
CG2グリースウレア系(合成油基油)クリーン環境用低発塵グリース。低発塵性・潤滑性・防せい性・酸化安定性に優れる。半導体・液晶製造装置に推奨。
CGLグリース混合石けん系(合成油+鉱油基油)クリーン環境用低発塵グリース。低転がり抵抗・潤滑性・防せい性に優れる。発塵を嫌う環境での低抵抗用途に向く。
AF2グリース耐フレッチングコロージョン専用グリース。微振動による腐食損傷(フレッチング)が起きやすい箇所に有効。
ふっ素系グリース(特殊品)フッ素系(PTFE)真空・耐食・超クリーン環境向け。蒸気圧が低く揮発しないため真空装置に最適。詳細はIKOに要問い合わせ。

📚 出典:特殊環境対応技術(潤滑)|IKO日本トムソン公式サイト

③ NSK(日本精工)推奨グリース一覧

NSKはリニアガイド・ボールねじ・ベアリング向けに独自開発したグリースを複数ラインナップしています。
特に低発塵クリーングリースLG2・LGUは半導体・クリーンルーム分野で高い評価を受けており、実務での採用実績も豊富です。

グリース名増ちょう剤主な特長・用途
LG2グリース
(NSKクリーングリース)
リチウム石けん系
(鉱油+合成炭化水素油)
クリーン環境用低発塵グリース。ふっ素系グリースと同等以上の低発塵性能を持ちながら、高い潤滑性・防錆性・低トルクを実現。使用温度:−20〜+70℃。
LGUグリース
(NSKクリーングリース)
リチウム石けん系LG2の温度範囲を高温側へ拡張した広温度域クリーングリース。高温環境でも低発塵性と耐久性を維持。
PS2グリースリチウム石けん系
(合成油+合成炭化水素油)
低温対応・高速軽荷重専用。NSKミニアチュアリニアガイド・ミニアチュアボールねじの標準採用グリース。使用温度:−50〜+110℃。低温での作動性が特に優れる。
AS2グリースNSKリニアガイド・ボールねじ向け一般用グリース。汎用産業機械の標準的な環境での使用に適した基本グリース。
LR3グリースNSK精機製品向け一般用グリース。リニアガイド・ボールねじの補給用として設定されている標準品。

📚 出典:精機関連製品(グリース)|NSK公式サイト低発塵グリースLG2、LGU スペーシアシリーズ|NSK

📚 現役設計者がすすめるグリース関連書籍

ここまでの知識をさらに深めたい方のために、私が実際に読んで役に立った書籍を紹介します。
設計の現場にそのまま持っていける実用書を厳選しました。

① 機械設計の基礎を網羅したい人へ

潤滑・グリース選定は「機械要素設計」の一部です。
以下の書籍は、ベアリング・グリース・ねじ・歯車まで一冊でカバーしており、
設計者のデスクに常備しておきたい一冊です。

機械要素全般の選定・設計を基礎から解説。軸受・潤滑のセクションが特に充実。

② 潤滑・グリースをより深く学びたい人へ

グリースのちょう度・成分・選定理論まで体系的に学べる専門書です。
「なぜそのグリースを選ぶのか」理論で理解したいエンジニアに最適です。

摩擦・摩耗・潤滑の科学「トライボロジー」をベースに、グリース選定の理論的背景を解説。中上級者向け。

③ リニアガイド・ボールねじ設計者に特化した一冊

本書の最大の特徴は、単なる仕組み解説に留まらず、
「設計の現場で何を考えるべきか」まで踏み込んでいる点です。

機械要素を設計する際の選定パラメータの意味や使い分け、さらには不具合の発生メカニズムと対策まで扱っている点が実務むけ。

🔑 設計者の本棚に揃えておきたい3冊セットです
「書籍①で基礎」→「書籍②で理論」→「書籍③で実務」という流れで読み進めると、グリース選定のスキルが体系的に身につきます。

最後に

ここまで、機械設計で使えるグリースの種類と選定方法としてまとめました。
本記事によって機械設計の参考として活用して頂けたら幸いです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。

なお、AKLABO.学習帳では、機械設計のご相談も承っております。
以下のリンクより、お気軽にご相談ください。

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