空圧機器で速度制御したいと言えば、スピードコントローラー。
製品の精度や効率を向上させるために、空圧シリンダの速度制御に頭を悩ませていませんか?
そんな時に役立つのが「スピードコントローラー」です。
しかし、スピードコントローラには様々な種類があり、最適な製品を選ぶのは至難の業です。
そこで今回は、空圧シリンダを使った速度制御をマスターできるスピードコントローラーの選定とトラブルガイドをまとめました。
空圧制御設計の参考になれば幸いです。
1. スピードコントローラーとは?
スピードコントローラーは、空圧シリンダの動作速度を調整できる速度制御弁です。
略してスピコンとも言われますね。そんなスピコンは、どんな仕組みで速度制御されるのかを解説します。
1-1. 速度制御の構造
スピードコントローラーは、一般的に絞り部と逆止部の2つが構成されています。
絞り部は、ニードルを回すことで空気量を変化させることができます。
逆止部は、1方向にしか空気を流すことができない(逆流ができない)仕組みになっています。
これらを組み合わせることで、空気量を調整できる方向、調整できない方向の2方向ができ、
速度制御したい時は、空気量を調整できる方向で使います。
1-2. 回路図で使う記号
回路図では、下図の記号を使うのが一般的です。
引用元:日本産業規格 JIS B 0120-2020 油圧・空気圧システム及び機器-図記号及び回路図-第1部:図記号
矢印がある部分が絞り部、傘と丸の部分が逆止部となっています。
2. 速度制御の種類
スピードコントローラーの速度制御には、メータインとメータアウトの2種類があります。
それぞれの制御について解説します。
2-1. メーターイン
メーターインは、シリンダに供給される空気を速度制御する方法です。
シリンダの中に空気が入る=「IN」と覚えると良いでしょう。
2-2. メーターアウト
メーターアウトは、シリンダから排気される空気を速度制御する方法です。
シリンダから空気が出る=「OUT」と覚えると良いでしょう。
3. 機能の種類
スピードコントローラーの機能は、前項で説明した構造が主流ですが、用途に合わせて機能が豊富にあるのが
スピードコントローラーの特徴です。
ここでは、それらの機能をまとめてご紹介します。
3-1. 速度可変機能
速度制御を可変させることで、停止時の衝撃を和らげたり、慣性力を抑えることができます。
その機能として使えるコントローラーが次の2つがあります。
クッション付きコントローラー
日本ピスコが販売しているコントローラーです。
減速をクッション機能として活用できるコントローラーで、3つのニードルを調整することで、
クッション位置(減速位置)を調整することができます。
減速コントローラー
引用元:SMC 減速コントローラ DAS
SMCが販売しているコントローラーです。
これもクッション付きコントローラーと同じで、ニードル調整することで減速する位置を調整ができます。
クッション付きコントローラーは、押し出し側・引き込み側と2個使いが必要ですが、減速コントローラーは、
1個で両方を調整できるため、部品点数を少なくしたい、1箇所で調整したいなどに活用することができます。
3-2. 目盛機能
通常のニードルは、手で摘めるニードルがあるだけなので、何回転したのかわからないです。
そんな時に目盛付きのコントローラーを使うことで回転位置を把握することができます。
また、流量調整できた後は、ニードルのプッシュロック機能で簡単にロックさせることもできます。
3-3. 排気機能
スピードコントローラーに排気機能を付与させることで、排気効率を向上させることができます。
排気に関わる機能としては次の2つがあります。
残圧排気付き
残圧排気ができるスピードコントローラーです。
メンテナンスする時は、圧縮空気の残圧を抜く必要があるため、それをスピードコントローラーでできてしまいます。
急速排気付き
すぐに排気できるスピードコントローラーです。
排気する配管分がなくなるため、その分急速に排気できるようになります。また。スペース確保、部品点数削減などにも貢献できます。
3-4. デュアル機能
スピードコントローラーを2個分搭載しているコントローラーです。
2個分の機能を1個で済ませたい場合に活用できるコントローラーとなっています。
4. 選定方法(5つのポイント)
スピードコントローラーを選ぶには、数多くの要素から選ばなくてはなりません。
ここでは、特に必須となる要素を5つのポイントとして解説します。
ポイント① 制御方式
スピードコントローラーを使うにあたり、どんなシリンダを使ってどの速度制御するのかを決めておく必要があります。速度制御の選定ポイントとして以下にまとめます。
メーターインにする場合
【メリット】 供給される空気量をシリンダ内に少しづつ入るため、速度は制御しやすい
【デメリット】 出力(押し出し力、引き込み力)が不安定になる
メーターアウトにする場合
【メリット】 供給される空気量が安定するため、出力(押し出し力、引き込み力)は安定する。
【デメリット】 飛び出し現象になる可能性がある
ポイント② 流量範囲
スピードコントローラーには、使用できる流量範囲があります。
一般的には、適用配管サイズが大きくなればなるほど、流量範囲が大きくなります。流量を制限したい場合に、注意しなければなりません。
ちなみに、空圧制御における流量単位には、L/min(ANR)と、末尾にANRを付けます。
ポイント③ 許容圧力
スピードコントローラーにも耐圧力があります。
一般的には、適用配管サイズが大きくなればなるほど、最高使用圧力が大きくなります。使用する圧力に合わせて選定しましょう。
ポイント④ 機能
前項で説明したように、スピードコントローラーにはいろんな機能やタイプがあります。
制御方式や使い方などによって機能を選べるので、仕様や要望に合うものを選びましょう。
ポイント⑤ 設置
設置できるタイプは大きく分けて3つあります。
構造によって使い分けると良いでしょう。
エルボタイプ
タップ穴に差し込めるタイプです。
基本的に漏れ防止できる管用テーパねじが使われるのが一般的です。
その中で、Rc用のねじについて詳しく書いた記事がありますので、参考にしてみましょう。
インラインタイプ
配管の中継部に入れ込めるタイプです。
配管の途中に入れ込みたい場合に活用できますが、調整できる方向があるので注意が必要です。
ダイレクトタイプ
ワンタッチ継手に直接差し込めるタイプです。
接続口がワンタッチ継手しかない場合に活用できます。
5. おすすめメーカー3選
スピードコントローラーを取り扱うおすすめメーカー3社をご紹介します。
SMC
空圧制御機器の大手メーカーです。スピードコントローラーの種類がかなり多くラインナップされています。また、減速コントローラーを取り扱うメーカーでもあります。
CKD
こちらも空圧制御機器の大手メーカーです。SMCよりスピードコントローラー種類のラインナップは劣りますが、デザインアワードを受賞したスピードコントローラーがあります。
日本ピスコ
空圧制御機器に強みのあるメーカーです。SMCよりスピードコントローラー種類のラインナップは劣りますが、速度可変ができるクッション機能付きスピードコントローラーがあります。
6. 実際の調整とトラブルシューティング
選定が出来ればあとは調整するだけですが、その作業にはいくつかやり方があります。また、想定外のトラブルも起きたりします。
そんな時に活用できる調整テクニックとよくあるトラブルシューティングをご紹介します。
6-1. 時間の調整方法
スピードコントローラーの速度調整を行う時は、一般的に時間で調整します。そのやり方は以下の2つです。
アナログで調整する
アナログ的に調整する方法です。やり方は、ストップウォッチを使って調整します。
この方法のメリットは、設備が不要という点がありますが、作業者がストップウォッチで測定するため、速度のばらつきが大きくなるデメリットがあります。
デジタルで調整する
デジタル的に調整する方法です。やり方は、通信設備を使って調整します。
この方法のメリットは、細かい周期でデータ取得できるため、速度調整の精度が良いことです。ただし、計測するための設備・ソフトウェアが必要になるデメリットがあります。
6-2. トラブル事例① 飛び出し現象
よくあるトラブルとして、飛び出し現象があります。
下図のようにメーターアウトで速度制御しようとすると調整する排気が抜けてしまうことで、速度制御できず急速な動きで飛び出してしまう現象です。
解決方法としては、押し出し側の制御をメーターイン追加させることで動作を安定化することができます
6-3. トラブル事例② 自重による動作不良
垂直にシリンダを設置したとき、ワークの重さによって思うように動作しない場合があります。
次の2つからトラブル回避テクニックを解説します。
自重が軽すぎて下がらない
自重が軽すぎて排気がうまくできず下がらない場合があります。
そんな時は、急速排気弁付きのスピードコントローラーに変更することで回避できます
自重が重すぎて維持できない
自重が重すぎてその場を維持できず落下してしまう場合があります。
そんな時は、メーターインとアウトの組み合わせにすることで回避できます。
7. 更にスキルを伸ばすために
スピードコントローラーの他に、空圧機器や制御、基礎など幅広く学習できるセミナーがあります。
特に、SMCが用意するセミナーはおすすめです。以下リンクから登録ができますので、参加してみてはいかがでしょうか?
まとめ
ここまで、速度制御をマスターできるスピードコントローラーの選定とトラブルガイドを解説しました。
本記事によって効率化になってくれたら幸いです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
なお、AKLABO.学習帳では、機械設計のご相談も承っております。
以下のリンクより、お気軽にご相談ください。
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